
2026.09.08
BPMNとは、業務プロセスの開始から終了までの流れを、決められた記号を使って図式化するための国際標準の表記法です。
日本語では業務プロセスモデリング表記法と訳され、実務ではBusiness Process Model and Notationの頭文字をとった呼び方が定着しています。
本記事では、BPMNの基本となる6種類の記号、BPMNで描ける4種類の図、記述・分析・実行という3つのレベル、そして読みやすい図にするためのルールまでを解説します。

BPMNは、業務のプロセスを開始から終了まで一本の流れとして描き、その流れを決まった形の記号で表現する表記法です。
読み方は「ビーピーエムエヌ」で、Business Process Model and Notationの略にあたります。
日本語訳は業務プロセスモデリング表記法ですが、実務では英字のまま呼ばれることが多くなりました。
一般的なフローチャートにも記号の決まりはありますが、BPMNは「誰が」「どのタイミングで」「どの条件で」動くのかまで記号で書き分けられる点が異なります。
たとえば申請から承認、支払までを1枚に描くとき、部門ごとの担当範囲と、条件で分かれる経路を同じ図に同時に置けるのが特徴です。
そのため、複数の部門やシステムが関わる業務、条件分岐が多い業務、繰り返し発生する業務の整理に向いています。
業務の全体像を1枚の図に落とし込めるため、担当者の頭の中にしかない手順を、組織の資産として残せるようになります。
BPMNが業務フローの整理に選ばれるのは、図が見やすいからではありません。
表記そのものが公的な規格として管理され、読み方が世界共通で固定されているためです。
ここでは、BPMNが国際標準として使われている3つの理由を順に解説します。
記号と意味がOMG仕様とISO規格で定められている
特定のツールに依存せず同じ図を読める
作成者が違っても図の意味が変わらない
BPMNの仕様は、標準化団体のOMG(Object Management Group)が策定し、維持しています。
現行版は2014年1月公開のBPMN 2.0.2です。
BPMN 2.0.1は国際規格ISO/IEC 19510:2013として発行され、2022年の見直しでも有効な規格とされています。
記号の形と意味が規格文書に書かれているため、解釈が人によって揺れません。
参考:
・OMG「Business Process Model and Notation 2.0.2」
・ISO/IEC 19510:2013
BPMNはベンダーニュートラルな仕様として設計されており、特定の製品に紐づいていません。
あるツールで描いた図を別のツールで開いても、記号の意味は変わりません。
作図ソフトを乗り換えても、過去に描いた業務フローはそのまま読める状態です。
社内でツールが統一されていない場合や、外部のコンサルタントやベンダーと図をやり取りする場面でも、この性質が効いてきます。
業務フローを我流で描くと、矢印や四角の意味が担当者ごとに変わり、後から読み直せません。
BPMNは記号の使い方が決まっているため、描いた人が異動しても図の意味は保たれます。
経営層と現場、業務部門とシステム部門のように、立場の違う相手と同じ図を見て議論できる点も利点です。
この共通言語としての性質が、業務の標準化を進めるうえでの土台になります。
BPMNは、BPMやBPR、UMLといった似た略語と並べて語られることが多く、役割を取り違えられやすい言葉です。
BPMNはあくまで「描くための記法」であり、業務を管理する手法や、システムを設計する言語とは層が違います。
ここでは、特に混同されやすい2つの用語との違いを解説します。
BPM(管理手法)との違い
フローチャートとの違い
位置づけ | 目的 | 表記のルール | 使う場面 | |
|---|---|---|---|---|
BPMN | 業務プロセスを描く表記法 | 業務の流れを共通の記号で表す | 規格で定義 | 部門をまたぐ業務の可視化 |
BPM | 業務を継続的に改善する管理手法 | 業務全体の最適化 | 手法のため表記の定めなし | 改善サイクルの運用 |
BPR | 業務プロセスを抜本的に再設計する手法 | 短期間での大幅な効率化 | 手法のため表記の定めなし | 全社的な業務改革 |
UML | ソフトウェアを設計する表記法 | システムの構造と動きを表す | 規格で定義 | システム開発の設計 |
フローチャート | 手順を図で表す一般的な記法 | 処理の順序と分岐を表す | 緩やか | 単一業務の手順整理 |
BPMはBusiness Process Managementの略で、業務プロセスを可視化して改善し続ける管理手法です。
一方のBPMNは、その管理手法の中で業務を描くときに使う記法にあたります。
BPMが「業務をどう回すか」の考え方に対し、BPMNは「どう描くか」の道具です。
BPMを進める過程で現状の業務を描く場面が来たとき、その描き方としてBPMNが選ばれます。
フローチャートは処理の順序と分岐を表す一般的な記法で、記号の決まりは緩やかです。
BPMNはフローチャートの一種ですが、記号の種類と意味が規格で細かく定められています。
違いは、担当者ごとの範囲を区切る枠や、組織間でやり取りされる情報を表す線が用意されている点です。
単一業務の手順を整理するだけならフローチャートで足り、部門をまたぐ業務にはBPMNが向きます。

BPMN 2.0は、図に置く要素をフローオブジェクト、接続オブジェクト、スイムレーン、アーティファクトの4分類で定義しています。
実務では、この4分類に属する6種類の記号を押さえておけば十分です。
ここでは、それぞれの記号が何を表し、どの形で描かれるのかを解説します。

形 | 分類 | 表すもの | |
|---|---|---|---|
イベント | 円 | フローオブジェクト | 業務の開始・途中・終了で起きる出来事 |
アクティビティ | 角の丸い四角 | フローオブジェクト | 実行される作業やタスク |
ゲートウェイ | ひし形 | フローオブジェクト | 条件による分岐と、分岐後の合流 |
接続オブジェクト | 実線・破線・点線の矢印 | 接続オブジェクト | 作業の順序、組織間のやり取り、補足の対応づけ |
プールとスイムレーン | 大きな枠と横帯 | スイムレーン | 業務に関わる主体と担当の範囲 |
アーティファクト | 書類の形・破線の囲み・注釈 | アーティファクト | 図の意味を補う付加情報 |
イベントは、業務の流れの中で起きる出来事を円で表す記号です。
業務の起点を示す開始イベント、途中で発生する中間イベント、流れの終わりを示す終了イベントの3つに分かれます。
線の太さで区別し、開始は細線、中間は二重線、終了は太線です。
円の中にマークを入れると、メールの受信を表すメッセージ、期日の到来を表すタイマーのように、出来事の種類まで書き分けられます。
アクティビティは、業務の中で実際に行われる作業を表す記号で、角の丸い四角で描かれます。
1つの作業を1つの記号として置き、四角の中に動作を書き込む形です。
それ以上分解しない最小単位の作業がタスクで、内部に複数の工程を含むものはサブプロセスです。
サブプロセスは四角の中に「+」のマークが付くため、折りたたまれた工程があることが図から分かります。
ゲートウェイは、流れを条件で分けたり合わせたりする記号で、形はひし形です。
中に入るマークで種類が分かれ、いずれか1つの経路に進む排他ゲートウェイには「×」が入ります。
同時に全経路を進む並列ゲートウェイは「+」、条件に合う経路を複数選べる包括ゲートウェイは「○」です。
承認の可否のように判断で流れが変わる箇所には、必ずこの記号を置く必要があります。
記号をつなぐ線は接続オブジェクトと呼ばれ、3種類に分かれます。
作業の実行順序を表すのはシーケンスフローで、実線の矢印です。
組織や主体をまたいだ情報のやり取りはメッセージフローが担い、破線の矢印で描きます。
補足情報を記号に対応づけるときは、点線の関連を用いる形です。
線の種類を取り違えると、業務の順序と情報の受け渡しが混ざり、図の意味が変わってしまいます。
プールは、業務に関わる会社や組織、システムといった主体を表す大きな枠です。
その枠の内側を部署や担当者ごとに横帯で区切ったものがスイムレーンです。
たとえば申請者、上長、経理部をそれぞれのレーンに置けば、どの作業を誰が担当するのかが一目で分かります。
部門をまたぐ業務でも受け渡しの箇所が見えるため、抜け漏れや停滞が起きやすい工程を特定しやすくなります。
アーティファクトは、業務の流れそのものには影響しない補足情報を表す記号です。
扱う書類やデータを示すデータオブジェクト、複数の作業をまとめて囲むグループ、図に説明を書き添える注釈の3種類です。
どれも流れを変える要素ではないものの、図を読む人が前提を理解する助けになります。
使用する帳票やシステムを書き添えると、引き継ぐ相手が必要な資料まで把握できます。
参考:OMG「Business Process Model and Notation 2.0.2」
BPMNは1種類の図だけを指す言葉ではありません。
仕様では、目的に応じて使い分ける4種類の図が定義されており、どれを描くかで表現できる範囲が変わります。
業務の内部を細かく描くのか、組織間のやり取りを描くのかで選ぶ図が違うため、ここでは4種類を順に解説します。
プロセス図
コラボレーション図
コレオグラフィ図
カンバセーション図
プロセス図は、1つの主体の中で業務がどう進むのかを描く、もっとも基本的な図です。
開始イベントから作業を順に並べ、条件分岐を挟みながら終了イベントまでつなぐ形をとり、業務の内部構造を細かく表せます。
経費精算や入社手続きのように、自社内で完結する業務の手順を整理する場面で使われます。
BPMNを初めて使うときは、まずこのプロセス図から描き始めるのが現実的です。
コラボレーション図は、複数のプールを並べて、主体のあいだで交わされるやり取りを描く図です。
自社と取引先、あるいは営業部と経理部のように、立場の違う相手が関わる業務に向いています。
プールをまたぐ情報の受け渡しはメッセージフローで表すので、どの時点で誰に何が渡るのかが明確です。
受け渡しの前後で待ちが生じる箇所も見えるため、業務が滞る原因を探せます。
コレオグラフィ図は、主体ではなく、主体のあいだで行われるやり取りの順序に焦点を当てた図です。
参加者の名前を添えた箱を並べ、どのメッセージがどの順に交換されるのかだけを示します。
各主体の内部でどんな作業をしているかは描かないので、取り決めや契約上の手順を確認する用途に適した形です。
企業間の受発注のように、相手の内部に踏み込まず手順を合わせたい場面で使われます。
カンバセーション図は、コラボレーション図を簡略化して、主体と主体の関係だけを俯瞰する図です。
参加者を線でつなぎ、そのあいだで交わされるやり取りをひとまとめの六角形で表します。
個々のメッセージの中身までは描かないため、全体像の把握や関係者の洗い出しに使われます。
関係する部門や取引先が多い業務で、詳細を描く前に登場人物を整理する段階に適した図です。
参考:OMG「Business Process Model and Notation 2.0.2」
BPMNには多くの記号が定義されていますが、実務でそのすべてを使う必要はありません。
仕様では、使う記号の範囲を段階的に区切る適合サブクラスが定められており、実務ではこれをレベルと呼びます。
レベルは描く人の習熟度ではなく、図の詳細度を表す区分です。
記述レベル
分析レベル
実行レベル
記述レベルは、仕様でDescriptive(記述適合サブクラス)と呼ばれる、記号をもっとも絞った段階です。
開始と終了のイベント、タスク、排他と並列のゲートウェイ、プールとレーンといった基本要素だけを使います。
業務部門の担当者が読んで理解できる粒度で、現状の業務を書き起こす段階です。
全社で書き方をそろえたい場合は、このレベルから始めると無理がありません。
分析レベルは、仕様でAnalytic(分析適合サブクラス)と呼ばれます。
記述レベルに中間イベントやメッセージ、タイマーを加えて例外処理や業務ルールまで表せます。
どの条件でどう分岐するかを図の中で確定させるので、自動化できる工程の切り分けに役立つ段階です。
デジタル庁が公開する地方公共団体の標準仕様の資料でも、業務フローは分析レベルで記載するよう定められています。
参考:デジタル庁「地方公共団体の基幹業務システムの標準仕様における業務フローについて」
実行レベルは、仕様でCommon Executable(共通実行適合サブクラス)と呼ばれる段階です。
描いた図をシステム上で動かす前提で、処理に必要な情報まで記号と属性で指定します。
BPMツールやワークフローシステムに読み込ませて、承認や通知を自動で進める使い方が想定される段階です。
図が設計書と実装を兼ねるため、業務部門とシステム部門が同じ図を見て進められます。

記号を正しく使っても、図が読み手に伝わらなければ意味がありません。
BPMNの図が読みにくくなる原因は、記号の知識不足よりも、文字の書き方と図の分け方にあります。
ここでは、読みやすい図にするために押さえておきたい3つのルールを解説します。
記号よりラベルの書き方で読みやすさが決まる
プールをまたぐやり取りはメッセージフローで描く
図が大きくなったらサブプロセスで折りたたむ
BPMNの図が伝わるかどうかは、記号の種類より、書き添える文字で決まる部分が大きいです。
タスクには「請求書を承認する」のように、動作が分かる書き方が必要です。
分岐のゲートウェイには「金額は10万円以上か」という判断内容を、分岐後の矢印には「はい」「いいえ」と結果を書き添えます。
ここまで文字が入っていれば、BPMNの記号を知らない相手でも内容が読み取れます。
同じプールの中では作業の順序をシーケンスフローでつなぎますが、プールをまたぐ線には使えません。
別の主体へ情報や書類が渡る箇所は、破線のメッセージフローで描くのが仕様上の決まりです。
ここを実線でつなぐと、別組織の作業を自分が指示している図になり、責任の範囲が読み取れません。
部門間の受け渡しが多い業務ほど、この線の使い分けが図の正確さを左右します。

工程が増えて1枚に収まらなくなったとき、記号を小さくして詰め込む対処は避けます。
まとまった工程をサブプロセスとして1つの記号に折りたたみ、中身は別の図に切り出す形です。
上位の図では業務の全体像だけを追えるようになり、詳細を知りたい人だけが下位の図を開く形になります。
粒度をそろえた図が階層で並ぶため、読み手の立場に応じて必要な深さだけを見せられます。

ここまで、BPMNの記号や図の種類、レベルの分け方を解説してきました。
ただし、BPMNで描いた図は業務を整理した時点のもので、描いたあとに運用へつなげる仕組みがなければ更新されずに古くなります。
業務フローの可視化から、その後の運用までを続けて扱えるのが、業務改善プラットフォーム「mfloow」です。
mfloowでは、業務フローを可視化したうえで、各工程に担当者と期限を割り当て、進捗や遅延をリアルタイムに把握できます。
BPMNで洗い出した工程とレーンの区切りを、そのまま担当と期日の設定に引き継げるため、図が資料のまま置かれる状態を避けられます。
繰り返し発生する業務は、時期が来るだけで自動的に立ち上がり、担当者と期日が設定された状態から始まる形です。
外部のSaaSやAIと連携して業務を自動化する機能もあり、二重入力や抜け漏れを減らせます。
さらに、ダッシュボードで業務の負荷を可視化できるので、どの工程がボトルネックになっているのかを特定し、業務改善につなげられます。
業務フローを描いて終わりにせず、改善を続ける土台として使えるでしょう。
A.業務フロー図は業務の流れを図にしたものの総称で、記号や書き方の決まりは作る側にゆだねられた状態です。
BPMNは、その業務フロー図を描くための表記法のひとつで、記号の形と意味が規格で決まっている点が違います。
業務フロー図が成果物、BPMNがその書き方の規格という関係です。
A.BPMN形式は、作成した図をXMLで保存するファイル形式で、拡張子には.bpmnが広く使われています。
BPMN 2.0では図をXMLで交換する仕組みが定められており、別のツールで開いて編集できます。
画像で書き出すと後から直せないので、原本はこの形式で残しておくのが安全です。
参考:OMG「Business Process Model and Notation 2.0.2」
A.BPMNだけを対象にした国内の公的資格はありませんが、ITパスポート試験のシラバスに用語例として挙げられています。
学習手段としては、IPAが運営するマナビDXのBPMN講座で修了証を受け取れます。
OMGもBPM分野の認定試験を実施しており、BPMN 2.0.2が出題範囲です。
参考:
・IPA「ITパスポート試験 シラバス Ver.6.5」
・OMG「BPM 2 Fundamental Exam」
A.図形を組み合わせれば書けますが、記号の形や線の種類を手作業でそろえる必要があり、工程が増えるほど修正に手間がかかります。
BPMNに対応した作図ツールなら記号が用意されており、表記の揺れが起きません。
小さな業務で試し、続けられそうならツールの導入を検討する進め方が現実的です。
A.UMLはソフトウェアの構造や振る舞いを表すための表記法で、システム開発の設計に使われます。
BPMNは業務そのものの流れを表す表記法で、業務部門の担当者が読むことを前提にした記法です。
同じ図で両方を兼ねようとすると、どちらの読み手にも伝わりにくくなります。

BPMNとは、業務プロセスの開始から終了までの流れを、決められた記号で図式化する国際標準の表記法です。
仕様はOMGが策定し、ISO/IEC 19510としても発行されているため、記号の意味が人やツールによって変わりません。
この「誰が読んでも同じ意味になる」性質が、我流の図との最大の違いです。
図に置く記号は、出来事を表すイベント、作業を表すアクティビティ、分岐と合流を担うゲートウェイ、順序と情報のやり取りを表す3種類の線、主体と担当を区切るプールとスイムレーン、補足情報を添えるアーティファクトの6種類です。
描く図にもプロセス図、コラボレーション図、コレオグラフィ図、カンバセーション図の4種類があり、自社内で完結する業務ならプロセス図、取引先や他部門とのやり取りを含むならコラボレーション図を選ぶことになります。
どこまで細かく描くかは、記述・分析・実行という3つのレベルで判断できます。
全社で書き方をそろえたい段階なら記述レベル、改善案やシステム化の要件を詰める段階なら分析レベル、図をそのまま動かす前提なら実行レベルが目安です。
そして図を伝わるものにするうえで効くのは、記号の知識より、タスクや分岐に書き添える文字の書き方になります。
プールをまたぐ線はメッセージフローで描き、1枚に収まらなくなったらサブプロセスで折りたたむ、この2点も押さえておいてください。
描いた図を運用まで続けて扱いたい場合は、業務改善プラットフォームの活用も検討してみてください。
この記事を書いたライター

mfloowブログ編集部
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