
2026.08.28
総務BPOとは、郵便や備品管理、受付対応、文書・契約管理といった総務業務のプロセスを、外部の専門会社へまとめて委託する仕組みのことです。
総務は担当する範囲が広いうえに他部門との兼務も多く、業務量が増えても人員を増やしにくい部門だといえます。
ただし、何をどこまで任せるのかを決めないまま話を進めてしまうと、社内の確認作業が増えてかえって負担が重くなりかねません。
本記事では、総務BPOで委託できる業務範囲とメリット・デメリット、費用の考え方、失敗しない委託先の選び方まで分かりやすく解説します。

総務BPOとは、総務部門が担う業務を工程ごと外部の専門会社に委託し、日々の運用から手順の改善までを任せる仕組みを指します。
人手を補うだけでなく、委託先が業務の設計段階から関わる点が大きな特徴です。
BPOは、業務の企画・設計から日々の運用までをプロセスごと外部の専門会社に任せる手法で、作業単位で切り出すアウトソーシングよりも委託する範囲が広くなります。
また人材派遣は自社が指揮命令を行って労働力の提供を受ける契約であり、指示を出すのが自社か委託先かという点が総務BPOとの決定的な違いになります。
総務が経理や人事と異なるのは、業務が1つの専門領域にまとまっておらず、庶務から法定行事の運営までが少人数に集中しやすい点です。
そのため委託を検討するときは、「総務」とひとくくりにせず、業務を分解して切り出す作業から始める必要があります。
総務の業務は範囲が広く、一覧にしないまま相談を始めると見積もりの前提がそろいません。
委託先が受けやすいのは、手順が決まっていて発生件数の見通しが立つ業務です。
ここでは、総務BPOの対象業務を9つの領域に分けて解説します。
庶務・オフィス管理
受付・社内問い合わせ窓口
文書・契約・押印の管理
福利厚生・健康診断の運営事務
株主総会・取締役会の運営サポート
防災・BCP・ファシリティ
社内イベント・社内広報の運営事務
車両・社宅などの資産管理
IT資産管理・社内ヘルプデスク
主な業務 | 委託のしやすさ | |
|---|---|---|
庶務・オフィス管理 | 郵便・宅配の受発送、備品や消耗品の管理、什器の修繕手配 | 高い |
受付・社内問い合わせ窓口 | 来客対応、代表電話、社内からの問い合わせ一次対応 | 高い |
文書・契約・押印の管理 | 契約書の保管と期限管理、押印申請の受付、規程文書の版管理 | 中程度 |
福利厚生・健康診断の運営事務 | 慶弔手続き、健康診断やストレスチェックの案内と記録管理 | 高い |
株主総会・取締役会の運営サポート | 招集通知の準備、議事録の作成補助、当日の運営事務 | 低め |
防災・BCP・ファシリティ | 備蓄品の管理、安否確認訓練の運営、オフィス移転の実務 | 中程度 |
社内イベント・社内広報 | 入社式や周年行事の運営事務、社内報の編集・配信 | 中程度 |
車両・社宅などの資産管理 | 社用車の車検や保険の手配、社宅の契約と入退去手続き | 高い |
IT資産・ヘルプデスク | PCや周辺機器の貸与管理、アカウント申請の受付、一次対応 | 高い |
郵便物や宅配便の受け取りと仕分け、消耗品の在庫管理と発注、什器の修繕手配といった庶務は、総務BPOで多く委託される領域です。
手順が決まっていて判断の余地が小さいため、処理の基準さえ渡しておけば、委託先でも社内と同じ品質を再現できます。
拠点が複数ある会社では、拠点ごとにばらついていた発注ルールを統一するだけでも、在庫の持ちすぎや欠品が目に見えて減っていきます。
来客対応や代表電話の取り次ぎ、社内からの問い合わせに一次対応する窓口業務も、委託先がチームで担える代表的な領域です。
総務担当者にとって問い合わせは作業を中断させる大きな要因であり、窓口を切り離すだけでも本来の業務に充てられる時間が戻ってきます。
想定される回答をFAQとして整備しておけば、同じ質問に何度も個別対応する状況を避けられる点も利点です。
契約書の保管と更新期限の管理、押印申請の受付と記録、社内規程の版管理といった文書業務も、総務BPOの対象に含められます。
ただし契約内容の判断や締結の可否は経営に直結するため、事務処理の部分だけを切り出して任せる形が現実的な進め方です。
期限の見落としは契約の自動更新や失効といった実害に直結するので、いつ誰に通知するのかという運用ルールを先に決めておきます。
慶弔手続きの案内や給付金の申請補助、健康診断やストレスチェックの受診案内と記録管理も、総務BPOで任せやすい業務にあたります。
健康診断は労働安全衛生法にもとづく法定業務であり、対象者の抽出から記録の保存まで手順が定まっている点が、委託と相性のよい理由です。
未受診者への連絡は回数が多く担当者の手を取られる作業のため、外部に移すだけでも負荷が大きく下がります。
招集通知の発送準備や議事録作成の補助、会場の手配や当日の運営事務など、法定行事に関わる事務作業も部分的に委託できます。
年に一度しか発生しない業務は社内に手順が残りにくいため、経験のある委託先の知見を借りる効果がとくに大きく表れる領域です。
一方で議案の内容や開示に関する判断は自社の責任範囲にあたるので、どこまでを事務として渡すのかを明確にしてください。
防災備蓄品の数量管理と入れ替え、安否確認訓練の運営、オフィス移転やレイアウト変更にともなう実務も、総務BPOの対象に含まれます。
備蓄品は消費期限にもとづく入れ替えが欠かせず、管理を後回しにすると更新時期を過ぎた在庫が積み上がってしまう点に注意が必要です。
移転やレイアウト変更は社内に経験者が少ない領域のため、実績のある委託先を入れると進行が安定します。
入社式や周年行事、表彰式といった社内イベントの運営事務や、社内報の編集と配信も総務BPOの対象に含められます。
会場や備品の手配、案内状の送付、出欠の集計、当日の受付といった作業は工程が読みやすく、外部に任せても品質が落ちにくい部分です。
一方で、何を社内に伝えたいのかという企画の意図は社外から補えないため、方針の決定は自社に残す前提で切り分けます。
社用車の車検や任意保険の更新手配、駐車場の契約、社宅の賃貸契約と入退去の手続きといった資産管理も、委託できる業務です。
いずれも更新期限の管理が中心となる業務のため、期限を管理する仕組みを持つ委託先に任せると、契約の失効というリスクを下げられます。
拠点や社宅が各地に分散している会社ほど、問い合わせや手配の窓口を一本化する効果が大きく表れる領域です。
PCやモニターの貸与と返却の管理、各種アカウントの申請受付、社内からの問い合わせへの一次対応も委託の対象に含まれます。
情報システムの担当者を置かず、総務が兼務している会社では、この領域が担当者の時間をもっとも奪っている場合も少なくありません。
ただしセキュリティ方針の決定やアクセス権限の承認は自社の判断が必要なため、申請の受付と記録までを任せる形が現実的です。
委託の成否は、業務範囲をどこで線引きするかでほぼ決まります。
総務は判断業務と作業が混ざりやすいため、工程単位で分ける視点が欠かせません。
ここでは、委託できる業務・残す業務・委託しにくい業務の3つに分けて整理します。
委託できる業務
社内に残す業務
委託しにくい業務
発生の頻度が読めるうえに手順が文書化されており、判断の基準を言葉で説明できる業務は、そのまま委託先へ引き渡せる状態にあります。
郵便物や備品の管理、受付の一次対応、健康診断の運営事務、押印申請の受付などが代表例として挙げられる業務です。
逆に判断基準が担当者の頭の中にしかない業務は、そのまま渡しても品質が安定しないため、先に言語化する作業から始めます。
全社に影響する意思決定や、経営層および従業員との調整を含む業務は、委託せず社内に残す判断が必要です。
具体的には、社内規程の改定方針の決定、リスク発生時の対応判断、労使に関わる調整、役員人事のように機密性がとくに高い情報を扱う業務が、これにあたる領域です。
総務BPOを活用しても、会社としての決裁と社内外への説明責任が自社にある点は変わりません。
専門資格が関わる業務については、範囲によって委託先が対応できない場合があるため、事前の確認が欠かせません。
社会保険や労働保険の申請書類の作成と提出代行は社会保険労務士の独占業務にあたり、有資格者が関与する体制であることが前提になります。
商業登記は司法書士、税務に関する手続きは税理士の業務範囲となるので、契約前に対応の可否を専門家にご確認ください。

総務BPOの効果は、コスト削減よりも「担当者に集中していた業務を分散できる」点に強く表れます。
『月刊総務』の2025年の調査では、戦略総務を実践していると回答した総務部門は約3割にとどまりました。
ここでは、導入事例で語られることの多い、総務に固有の5つのメリットを解説します。
戦略総務へのリソースシフト
繁閑差とスポット業務の吸収
属人化と担当者不在のリスク解消
業務プロセスの標準化と改善
固定費から変動費への転換
日常の庶務や問い合わせ対応を外部へ移すと、社内の担当者は制度設計や職場環境の整備といった企画に時間を充てられます。
『月刊総務』が2025年に実施した調査でも、業務量の多さに対する不満は根強く、業務効率化の必要性が課題に挙げられました。
作業を減らすこと自体を目的にせず、空いた時間を何に使うのかを先に決めておくと、導入の成果が社内でも見えやすくなる点が重要です。
総務は明確な閑散期がないまま、株主総会や健康診断、年度替わりの手続きやオフィス移転といった山が重なる時期を抱えている部門です。
処理量に応じて委託量を増減できる契約にしておけば、繁忙期に合わせて人を採用しなくても体制を保てるようになります。
移転や制度変更のように一時的に業務が膨らむ場面では、その部分だけをスポットで切り出す使い方も有効な選択肢です。
総務は担当者が1人か2人という会社が多く、退職や休職、急な欠勤がそのまま業務の停止に直結しやすい部門にあたります。
委託先はチーム体制で対応するため、担当者が休んでも処理が止まらず、特定の個人に依存しない体制を確保できる点が大きな効果です。
担当者が代わるたびに品質が落ち、社内が対応に追われるという状況からも抜け出せる点は、長期的に見て大きな価値だといえます。
総務BPOは作業を代行するだけの手段ではなく、業務を移管する過程で手順を洗い出し、無駄な工程を整理する機会にもなります。
社内では当たり前になっていた回覧や二重確認が、外部の目を通すと省略できる工程だと分かるケースは少なくありません。
標準化された手順が文書として残れば、委託先を変える場合や将来内製に戻す場合にも、そのまま資産として活用できます。
総務担当者を自社で採用する場合、給与のほかに社会保険料や求人費、育成にかかるコストまでが固定費として発生し続けることになります。
委託であれば処理量や稼働時間に応じた費用となるため、組織の規模が変わったときに体制を調整しやすくなる点が利点です。
ただし委託費用の妥当性は金額の大小ではなく、社内で同じ業務を回した場合のコストとの比較で判断してください。
総務BPOには、導入前に把握しておけば手を打てるデメリットがあります。
とくに総務は社内の情報が集まる部門のため、情報管理と社内対応の設計が重要です。
ここでは、4つのデメリットとそれぞれの対策を解説します。
社内にノウハウが残らない
機密情報・個人情報の漏えいリスク
社内対応がブラックボックス化する
可視化できていないと委託できない
業務を丸ごと渡してしまうと、処理の判断基準が社内から徐々に失われ、委託先を変えたいときに動けなくなってしまいます。
対策として有効なのは、委託した業務のフロー図と判断基準を自社側でも保有し、内容が変わるたびに反映する運用を決めておく方法です。
年に一度は記載内容を見直し、最新の状態に保つところまでを含めて、運用の仕組みとして設計してください。
総務は、従業員の個人情報から取引先との契約書、取締役会の資料まで、機密性の高い情報を日常的に扱う部門にあたります。
委託先の認証取得の有無だけで判断せず、情報の受け渡し方法や保管期間、再委託の可否を契約段階で具体的に取り決めます。
委託先の体制だけでなく自社側の受け渡し手順も同時に見直さなければ、対策としては不十分な状態が残ってしまう点に注意が必要です。
問い合わせ窓口を外部に移すと、社内でどのような相談が起きているのかが総務担当者から見えなくなってしまう場合があります。
問い合わせの件数や内容を定期的に報告してもらう仕組みを契約に含めておけば、現場で起きている変化を把握し続けることが可能です。
報告を受け取るだけで終わらせず、繰り返し発生している相談は制度そのものや運用ルールの見直しにつなげてください。
委託先に業務を引き渡すには、誰が・いつ・何を・どの基準で処理しているのかを説明できる状態にしておくことが前提になります。
総務には「気づいた人がやる」という形で回ってきた業務が残りやすく、実際に洗い出すと一覧にない作業が次々と出てくるものです。
可視化ができていないまま見積もりを依頼すると金額は概算にとどまり、契約後の追加費用や差し戻しにつながってしまいます。
総務BPOの費用は、委託する業務範囲と処理量によって大きく変わります。
大手のBPO企業は個別見積もりが中心のため、公開されている料金は多くありません。
ここでは、料金体系と公開料金の例、費用が上下する要因を解説します。
3つの料金体系の違い
公開されている料金の例
費用が上下する4つの要因
費用の決まり方 | 向いているケース | |
|---|---|---|
時間単位型 | 月あたりの稼働時間で契約する | 業務範囲が固まりきっていない段階 |
月額固定型 | 委託する業務範囲を決めて定額で契約する | 発生件数が安定している業務 |
従量課金型 | 処理件数や対応件数に応じて変動する | 繁閑差が大きく件数が読みにくい業務 |
総務BPOの料金は、稼働時間で決まる時間単位型、業務範囲で決まる月額固定型、処理件数に応じて変わる従量課金型の3つに分かれる形です。
同じ月額10万円でも、時間で決まるのか件数で決まるのかによって、業務量が増えたときに発生する負担はまったくの別物です。
自社の従業員数や拠点数が今後どう変わるのかを踏まえたうえで、どの体系が有利になるのかを判断してください。
オンラインアシスタント型のサービスには料金を公開している事業者があり、目安をつかむ材料として活用できます。
たとえばCASTER BIZ assistantは、月30時間のBASICプランを6か月契約で月額132,000円(税込)と公表しました。
一方、常駐で受託する大手事業者は個別見積もりが中心のため、前提条件をそろえて複数社から提案を受ける進め方が現実的です。
費用を左右する1つ目の要因は委託する業務範囲の広さであり、扱う業務が増えるほど必要な体制も大きくなって金額に反映されます。
2つ目は処理件数、3つ目は常駐かオフサイトかという運用形態で、自社のオフィスに人を配置する形式ほど費用は上がる傾向です。
4つ目は対応する時間帯であり、夜間や土日の対応を求める場合は、別料金として加算されるケースが一般的だといえます。

総務BPOは、どの会社にも同じ効果をもたらす手段ではありません。
業務量と手順の固まり具合、そして社内に残せる人員の有無によって、向き不向きがはっきりと分かれます。
ここでは、向いている企業と向いていない企業の特徴を整理して解説します。
向いている企業
向いていない企業
状況 | 取るべき進め方 | |
|---|---|---|
向いている企業 | 総務が他部門と兼務、拠点が複数、繁閑差が大きい | 定型業務から部分委託で開始する |
向いていない企業 | 手順が未整備、判断業務の比率が高い、委託範囲を決めきれない | 可視化と標準化を先に進める |
総務担当者が経理や人事を兼務している会社や、拠点ごとに庶務のやり方が異なっている会社では、委託の効果がとくに出やすい傾向です。
新規拠点の立ち上げや組織再編を控えている場合も、経験のある委託先を入れることで立ち上がりが早まります。
進め方としては、まず郵便物や備品管理といった定型業務から始め、運用が安定してから範囲を広げていくと失敗を避けられます。
手順が文書化されておらず、担当者ごとにやり方が異なる状態のまま委託しても、期待した品質と効果は得られません。
判断をともなう業務の比率が高く、切り出せる定型業務が少ない会社についても、委託によって得られる効果は限定的なものにとどまります。
この場合は、まず社内で業務を洗い出して手順を標準化し、委託できる形に整えてから検討する順序が現実的な進め方です。
総務は業務の幅が広いぶん、事業者ごとに得意な領域が大きく異なります。
価格だけで比べると、対応できない業務が社内に残って工数が減らない結果になりかねません。
ここでは、委託先を選ぶ際の6つのポイントを解説します。
委託したい業務の対応範囲
常駐かオフサイトかの運用形態
情報セキュリティ体制
業務改善まで踏み込めるか
報告体制とコミュニケーション
料金体系と見積もりの前提
まず確認すべきなのは、自社が任せたいと考えている業務に、その事業者が実績をもって対応できるかどうかという点です。
受付やメール室の運営に強い事業者、文書管理や契約事務に強い事業者というように、得意とする領域は会社ごとに分かれています。
複数の業務をまとめて任せたい場合は、対応範囲の広さと処理できる業務量の両方を、事例をもとに確かめてください。
総務は現物を扱う業務が多く、郵便物の仕分けや備品の補充のように、オフィスでの対応が避けられない作業が一定量あります。
一方でデータ入力や書類作成、記録の管理は、委託先の拠点で処理するオフサイト運用に切り替えることで費用を抑えられる部分です。
どの業務をどちらの形態で回すのかという設計は費用にも直結するため、提案の段階で具体的に確認しておきます。
総務が扱う情報は機密性が高いため、委託先の情報管理体制は選定における重要な判断材料になります。
プライバシーマークやISO/IEC 27001といった認証の取得状況に加えて、作業に使う端末の管理方法や再委託の有無まで質問してください。
認証を取得しているかどうかだけで判断せず、実際の運用ルールや教育体制にまで踏み込んで確認する姿勢が欠かせません。
作業を代行するだけの委託先を選んでしまうと、非効率な手順がそのまま社外へ移るだけで終わり、コストだけが残る結果になりかねません。
移管の過程で業務フローの見直しや標準化まで提案してくれるかどうかは、中長期の費用対効果を大きく左右する要素です。
提案力を見極めるには、過去にどのような改善を行い、どの程度の効果が出たのかを具体的に聞くとよいでしょう。
定例会を開く頻度、報告書に含める項目とその形式、トラブルが起きたときの連絡経路は、契約前に取り決めておくべき項目です。
報告の仕組みがないまま運用を始めると、品質の低下に気づくのが社内の従業員から指摘を受けたときになりがちで、対応も後手に回ります。
窓口となる担当者が固定されるのか、担当が交代する場合の引き継ぎ方法はどうなるのかも、あわせて確認しておきましょう。
見積もりを比較する際は、含まれる業務の範囲、対応する時間帯、想定している処理件数という前提をそろえてから並べてください。
前提がずれたまま金額だけを比べても、安く見えた提案が運用開始後の追加費用で膨らみ、結果的に割高になる場合があります。
想定件数の上限を超えたときの単価と、範囲外の業務が発生したときにどう扱うのかについても、契約前に必ず確かめておきます。
自社の業務を説明できる状態を作ってから外部に声をかける順序が、見積もりの精度と移管のスムーズさを左右する要因です。
工程を飛ばすと、契約後に範囲の解釈違いが表面化しがちです。
ここでは、導入の流れを5つのステップに分けて解説します。
総務業務を洗い出して可視化する
委託範囲を文書で確定する
RFPで複数社から提案を受ける
業務フローとSLAを設計する
テスト運用から本稼働へ
最初に、1年間で発生する総務業務を棚卸しして一覧化し、それぞれの担当者・発生頻度・所要時間・判断の基準を書き出していきます。
総務は他部門からの突発的な依頼が多いため、月次の定例業務だけでなく、不定期に発生している作業まで漏れなく拾い上げてください。
この一覧がないまま相談に進んでしまうと、委託先から出てくる見積もりは概算にとどまり、契約後の追加費用につながります。
洗い出した業務を、委託する業務・社内に残す業務・判断をともなう業務の3つに分類し、範囲表として文書にまとめます。
境界があいまいな業務については、どちらが起点となって作業を始め、どの工程で引き渡すのかを工程単位で明記しておくことが重要です。
この範囲表は契約書に添付する資料になるだけでなく、運用開始後に判断が割れたときの基準としても機能します。
委託範囲が固まったら、導入の目的と要件、対象業務をまとめたRFP(提案依頼書)を作成し、候補となる複数の事業者に提示します。
前提条件をそろえたうえで依頼すれば、各社から出てくる提案内容と金額を同じ土俵で比較することが可能です。
総務は事業者ごとに得意な領域が大きく異なるため、タイプの違う3社前後から提案を受けると、比較の判断材料が十分にそろいます。
委託先が決まったら、新しい業務フローと自社・委託先それぞれの責任分担、品質基準となるSLAを一緒に設計していきます。
問い合わせへの対応期限や処理の正確性といった項目は、感覚的な表現ではなく、測定できる数値として設定しておくことが重要です。
ここで定めた基準が、運用開始後に品質を確認するときの物差しとなり、改善の議論を進める土台にもなります。
いきなり全面的に移行するのではなく、一部の業務や特定の拠点に限定して試験的に運用し、そこから範囲を広げていきます。
並行運用の期間に判断基準のずれや情報連携の不足を洗い出しておけば、本稼働後の差し戻しを大きく減らすことが可能です。
問題がないと確認できた段階で切り替えれば、社内の従業員が混乱したり、対応の窓口が分からなくなったりするリスクを抑えられます。

総務BPOは契約して終わりではなく、制度改正や組織変更に合わせて運用を調整し続ける必要があります。
委託した業務そのものも、時間の経過とともに実態が変わっていくためです。
ここでは、運用を定着させる3つのポイントを解説します。
定例会でSLAとKPIを確認する
判断基準をドキュメントに残す
年1回は棚卸しと範囲の見直しを行う
月次または四半期ごとに定例会を設け、対応件数や期限の遵守状況、ミスの発生率といった品質の指標を確認する場が必要です。
数値を追わずに運用を続けると、品質が落ちていることに気づくのが遅れ、社内からの指摘が入って初めて問題が表面化しがちです。
指標が悪化した場合は、原因が委託先の体制にあるのか、それとも自社側の情報提供の遅れにあるのかを切り分けてください。
運用のなかで発生したイレギュラーな案件は、その場のやり取りだけで解決して終わらせないという姿勢が大切になります。
どう判断したのかという内容とその根拠を、判断基準への追記として残しておけば、同じ相談が再び発生したときにも迷わず対応できるはずです。
こうした蓄積は、将来的に委託先を変更する場合や、業務を内製に戻す場合の備えとしても効いてくるはずです。
年に一度は業務の一覧を更新し、あらたに委託したほうがよい業務と、社内に戻すべき業務がないかを洗い直していく作業が欠かせません。
組織変更や制度改正、拠点の増減によって、契約当初に決めた範囲が実態と合わなくなっているケースは決して珍しくないためです。
見直した結果は契約内容にも反映させ、範囲表と実際の運用が一致している状態を保っておきましょう。

ここまで見てきたとおり、総務BPOで成果を出せるかどうかは、委託前に業務を可視化し、判断基準を言葉にできているかどうかで決まります。
この可視化と標準化を支えるのが、業務改善プラットフォーム「mfloow」です。
mfloowは、業務フローの整理からマニュアル化、運用(進捗管理・タスク管理)、分析までを一気通貫で行えるサービスとして提供しています。
本記事で触れたとおり、総務は「気づいた人がやる」業務が残りやすく、洗い出してみないと全体像がつかめません。
mfloowでは業務フローを可視化したうえで、担当者と期限を割り当て、進捗や遅延をリアルタイムに把握できます。
委託先へ引き渡す範囲を決める際にも、この可視化された業務フローがそのまま範囲表の下地になります。
株主総会や健康診断、備蓄品の入れ替えのように毎年決まった時期に発生する業務は、時期が来ると自動で立ち上がり、担当者と期日を設定できる仕組みです。
総務のように年次業務が多い部門では、この仕組みが抜け漏れの防止に直結する部分です。
さらに、外部SaaSやAIと連携して業務を自動化することで、複数のシステムに同じ情報を入力する手間や、転記による抜け漏れを減らせます。
ダッシュボードで負荷を可視化すれば、どの業務にどれだけ工数がかかっているかが分かり、委託すべき業務とボトルネックの特定にも役立つでしょう。
委託を選ぶ場合も社内で効率化を進める場合も、出発点は業務を見える状態にすることです。
A.総務BPOは業務プロセスごと委託し、委託先が設計や改善まで担う点に特徴があります。
アウトソーシングは作業単位の切り出しが中心で、人材派遣は自社が指揮命令を行って労働力の提供を受ける契約です。
指示を出すのが自社か委託先かという点が、実務上もっとも大きな違いになります。
A.中小企業でも利用できます。
むしろ総務担当者が1人しかいない会社ほど、退職や休職によって業務そのものが止まるリスクは大きいといえるでしょう。
郵便物の管理や備品の発注といった定型業務から部分的に委託し、運用の様子を見ながら範囲を広げていく進め方が現実的です。
A.受付だけ、備品管理だけといった業務単位での委託にも、多くの事業者が対応しています。
一度にすべてを移すよりも、移管の途中でつまずくリスクを抑えられる進め方だといえます。
まず1つの業務で運用を安定させ、手順が固まってから次の業務へ広げていく順序が安全です。
A.業務の洗い出しから本稼働までは、3か月から6か月ほどの期間を見ておくと安全です。
すでに業務の洗い出しが済んでいる会社であれば、より短い期間で移管できる場合もあります。
株主総会や健康診断の時期など、繁忙期を避けて移行のタイミングを設定すると、負荷の集中を防げます。
A.契約書に定めた解約予告期間に従って通知し、データの返却を受けたうえで次の委託先へ移管する流れです。
このとき業務フローと判断基準が自社に残っていないと、移管作業そのものが難航します。
委託中も業務の全体像を社内で保持しておくことが、乗り換えの自由度を確保する条件になります。

総務BPOとは、庶務やオフィス管理、受付、文書・契約管理、法定行事の運営事務といった総務業務のプロセスを、外部の専門会社へまとめて委託する仕組みのことです。
委託できる業務は幅広く、庶務・オフィス管理や受付、文書管理、福利厚生の運営事務、株主総会のサポート、防災・BCP、社内イベント、資産管理、IT資産管理まで9つの領域に整理できました。
一方で、規程の改定方針やリスク対応の判断、労使に関わる調整は社内に残す領域であり、社会保険の申請代行のように有資格者の関与が必要な業務も存在する点に注意してください。
メリットは、戦略総務へのリソースシフト、繁閑差の吸収、属人化の解消、プロセスの標準化、固定費の変動費化という5点に整理できる内容です。
対してデメリットは、ノウハウが残らないこと、情報漏えいのリスク、社内対応のブラックボックス化、可視化されていないと委託できないことの4点であり、いずれも事前の設計で対策を打てます。
費用は業務範囲と処理量、運用形態、対応時間帯で変わるため、複数社から前提をそろえて提案を受けてください。
総務が他部門と兼務している会社や繁閑差が大きい会社は定型業務からの部分委託が有効ですが、手順が未整備の会社は可視化と標準化を先に進めるほうが結果的に近道になります。
そして、どの選択をするにしても最初に必要になるのは、現行の総務業務を洗い出して見える状態にする作業です。
mfloowでは、業務の可視化から標準化、運用の定着までを支援しています。
総務業務の整理から着手したい場合は、サービス資料をご覧ください。
この記事を書いたライター

mfloowブログ編集部
mfloowブログ編集部メンバーが不定期で更新します。業務効率化やバックオフィス業務をテーマに、読者の皆さまのお役に立てる情報を解説しています!
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