法定調書は、事業主が毎年1月31日に提出することが義務付けられている書類です。本記事では、法定調書の概要や目的、具体的な提出方法から、提出しなかった場合のペナルティまで、詳しく解説していきます。法定調書とは法定調書とは、「所得税法」、「相続税法」、「租税特別措置法」および「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」の規定により税務署への提出が義務づけられている資料をいいます。引用元:No.7401 法定調書の種類|国税庁つまり、適正に税金を課税するため、税務署への提出を義務付けられた書類が「法定調書」です。所得税法における法定調書では、給与や報酬などの支払金額や源泉税額などを税務署へ報告します。これにより従業員や取引先などが受け取った所得を税務署が把握し、適正な課税を行います。法定調書の提出義務を負うのは支払者法定調書の提出義務があるのは、給与の支払者など特定の支払いを行う方です。法人の他、公共団体なども含まれ、給与の支払いを行った個人事業主や、不動産業者である個人も義務者となります。支払先やその内容によって、作成すべき法定調書の種類が異なります。例えば、企業の人事や経理担当者が担当する給与所得に関する法定調書には、次のようなものがあります。支払先支払内容調書の種類従業員・役員給与給与所得の源泉徴収票従業員(※)・役員退職金退職所得の源泉徴収票個人事業主等報酬・料金等支払調書不動産の貸主不動産使用料不動産賃貸料等支払調書※従業員へ支払った「退職所得の源泉徴収票」については、役員への支払いと異なり税務署への提出義務はありませんが、法定調書合計表には支払った金額、人数、源泉徴収額を記載する必要があります。個人事業主への報酬や料金、不動産の使用料など、支払先と内容によって作成する調書は異なりますが、いずれも提出義務を負うのは支払者となります。法定調書の目的は適正な納税のため法定調書の提出義務により、給与や報酬などの支払者は、その支払金額や源泉徴収税額などを税務署に報告を行います。税務署は、法定調書を元に納税者が正しく所得を申告し、適正な金額の税金を納めているかをチェックします。法定調書の目的・受給者(支払いを受ける人)の所得把握・脱税の防止・税負担の公平性公平で適切に税金を徴収することを目的としています。法定調書の種類法定調書の種類を大きく分類すると、以下の4つになります。所得税法に規定するもの相続税法に規定するもの租税特別措置法に規定するもの国外送金等調書法に規定するものそれぞれ代表的なものだけに絞って解説します。(1)所得税法に規定するもの所得税法に規定する法定調書の内、企業が扱う頻度が高いのは以下の4つです。給与所得の源泉徴収票退職所得の源泉徴収票報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書不動産の使用料等の支払調書中でも「給与所得の源泉徴収票」は、ほとんどの企業が提出することになります。提出範囲は、年末調整をしたもの、しなかったもので下記のように変わります。年末調整をしたもの(1)法人の役員(現に役員をしていなくても、その年中に役員であった者を含みます。)については、その年中の給与等の支払金額が150万円を超えるもの。なお役員には、相談役、顧問その他これらに類する方が含まれます。(2)弁護士、司法書士、税理士等については、その年中の給与等の支払金額が250万円を超えるもの(3)上記(1)および(2)以外の者については、その年中の給与等の支払金額が500万円を超えるものなお、上記(2)の弁護士等に対する支払は、給与等として支払っている場合の提出範囲ですので、報酬として支払う場合には、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を提出することとなります。引用元:No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等|国税庁年末調整をしなかったもの(1)「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した方で、その年中に退職した方や、災害により被害を受けたため給与所得に対する所得税および復興特別所得税の源泉徴収の猶予を受けた方については、その年中の給与等の支払金額が250万円を超えるものただし、法人の役員については、50万円を超えるもの(2) 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した方で、その年中の主たる給与等の金額が2,000万円を超えるため、年末調整をしなかったもの(3) 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった方(給与所得の源泉徴収税額表の月額表または日額表の乙欄または丙欄の適用者)については、その年中の給与等の支払金額が50万円を超えるもの引用元:No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等|国税庁(2)相続税法に規定するもの企業が「相続税法に規定する法定調書」を提出するタイミングとしては、従業員が死亡退職した場合などがあります。従業員が死亡によって退職した場合、退職手当金等の支払いを受けるのは、その従業員の相続人となります。死亡により退職した者の退職手当金等の受取人が複数いる場合、それぞれの受取人ごとに「退職手当金等受給者別支払調書」を作成するなど、細かな対応が求められます。この相続税法にかかわる退職手当金支払いに対する法定調書は、所得税法上の退職所得の源泉徴収票とは別のものになりますので、混同しないように注意が必要です。(3)租税特別措置法に規定するもの租税特別措置法に規定する法定調書は、ストックオプションに関する支払い時に提出するケースがあります。例えば、特定新株予約権を役員や従業員に付与した場合、その付与や行使に伴う利益は税務署に報告する必要があります。この報告の際に「特定新株予約権等に関する調書」が利用されます。(4)国外送金等調書法に規定するもの国外送金調書法に規定する法定調書は、企業が直接提出するものではなく、金融機関が提出する書類です。例えば、企業が国外の取引先に対して、100万円を超える製品代金を送金する場合、金融機関を通じて送金が行われます。この際、送金内容(送金者、受領者、金額、目的など)が金融機関により「国外送金等調書」として税務署に報告されます。同様に、国外から受け取る送金についても金融機関は同様の報告が求められ、100万円以下の場合は調書の提出が免除されます。法定調書の提出法定調書は、法定調書合計表と併せて提出します。【法定調書合計表とは】法定調書合計表は、法定調書と併せて税務署に提出する必要がある書類で、各法定調書の内容を総括する役割を持ちます。法定調書には支払いに関する個別の情報が記載されるのに対し、法定調書合計表ではこれらの法定調書の総額(支払金額、源泉徴収税額、対象人数など)を取りまとめ、税務署に対して全体像を把握できるように報告します。法定調書の提出期限法定調書の提出期限は、支払いが確定した年の翌年1月31日までです。前述の通り、源泉徴収票や支払調書などの法定調書と「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を併せて所轄税務署に提出しなければなりません。また、給与支払報告書(源泉徴収票と同じ内容が記載されています)や特別徴収票(役員等への退職金の源泉徴収票にあたります)については、税務署ではなく従業員が住む市区町村に提出する必要があります。参照:第1 法定調書の提出期限等について法定調書の提出方法法定調書の主な提出方法は以下の4つです。書面e-Tax(国税電子申告・納税システム)認定クラウド光ディスク(CD・DVD)提出すべき各法定調書の枚数が前々年で100枚以上の場合、e-Taxやクラウド等での提出が義務付けられています。また、令和9年1月以降に提出する法定調書については、電子提出義務基準の引き下げが行われ前々年の各法定調書の枚数が30枚以上の場合、e-Tax等による提出が必要になります。令和7年中に提出する各法定調書の枚数が30枚以上になった企業は、再来年に向けe-Tax等を使用した法定調書の提出に備える必要があります。なお、令和5年4月1日から、「支払調書を光ディスク(CD・DVDなど)で提出する際に必要だった承認申請」が廃止されました。以前まで、e-Tax(電子申告)などの提出義務がない場合、光ディスクで法定調書を提出する際には、事前に所轄税務署に「承認申請書」を提出し、その承認を受ける必要がありました。しかし、今後はその手続きが不要になり、より手軽に光ディスクを使って提出できるようになっています。法定調書の提出を忘れたら法定調書は、所得税等の確定申告などの書類と違い追徴課税の対象にはなりません。ただし、未提出の場合は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金を課せられる可能性があります。すぐに罰せられるわけではありませんが、期日内に提出しましょう。 参照:所得税法(昭和四十年法律第三十三号)マイナンバーが必要な法定調書もある企業が法定調書を作成する際、マイナンバーの記載は法律で定められた義務です。具体的には、給与所得の源泉徴収票や退職所得の源泉徴収票、報酬・料金等の支払調書、不動産の使用料等の支払調書などが該当します。これらの書類を税務署に提出する際、従業員や受取人のマイナンバーを記載することが求められています。もしマイナンバーの提供が受けられない場合でも、提供を求めた経過を記録しておくことが推奨されています。参照:法定調書に関するFAQ|国税庁法定調書など部署間の連携が必要な業務は『mfloow(エムフロー)』で法定調書とは、給与や報酬などの支払金額や源泉税額を税務署に報告するための書類です。適正な納税を確保するために支払者である事業主に提出義務があります。法定調書は翌年の1月31日までに税務署に提出が必要です。企業は、従業員や受取人のマイナンバーを記載する義務もありますので、人事・経理・総務などが連携をとる必要があります。自社の特定個人情報(マイナンバー)の取扱規程に則り、取扱担当者以外が扱うことがないように、提出する法定調書の種類ごとに担当者を明確に分けるなどして、適切な管理を行いましょう。弊社では、各部署のタスク進捗状況を可視化するツール『mfloow(エムフロー)』を提供しております。タスクを可視化し人為的ミスを減らしたい、自社の成長を加速させたいと考えている企業はぜひお問い合わせください。